コロナ以降、マスクでの外出となり、相手の表情が分かりづらいことで不便さ、不安を感じたりしていませんか?
私は、新しい場所で初めてお会いしたお母さん方と話した際、会話の「間」、「雰囲気」を察するのが難しく感じました。また、子どもも学校で、友達の表情が分からなくて寂しい、新しい友達を作るのが難しいと言っていました。
会話とは声だけでなく、表情も使って行うもの
話す相手の表情が分かるということがどれほど大切かとしみじみ感じています。また、表情が分からないことで、こんなにも心細く感じるのかとも。マスク生活で、乳幼児期、思春期のお子さんを心配している方もいらっしゃるのではないかと思います。
私自身、そのような不安を感じているなか、「教育機関で先生や友達がお互いマスクで接することのリスク」について、明和政子教授(京都大学大学院教育学研究科)のインタビュー記事がありましたので、ぜひご紹介したいと思います。
子どもは表情も見ている
記事では、ヒトの心の発達や進化を研究する明和先生が、常に周りの大人の表情が読めないことによる、「子どもの発達に影響する可能性」を指摘されています。また、その対策として、親子のコミュニケーションを深める効果的な方法にも触れていました。
大人がマスクで接する時の、赤ちゃんの発達への影響
目や口全体を見ることで相手の気持ちを理解、口元から発する音声を見聞きし、真似することで言葉を身に付けたりする乳幼児期に、マスクをした他者との日常が、影響を与えるリスクは否定できないとのこと。
リスクについてはまだ検証されていないものの、保育現場から
- コロナ以前に比べて、子どもたちの笑顔が乏しい気がする。
- 人見知りが起こりにくくなっている。
- ことばの獲得もいつもと比べて遅い傾向にある気がする。
という意見があるようで、子どもたちの様子を見守ることが必要だそうです。
ソーシャルディスタンスの影響
また、マスクだけではなく、ソーシャルディスタンスという制約が子どもたちに意識的なストレスを生み出し、そのストレスを言葉で表現することが難しいことも指摘されています。
そのような子どもたちへのサポートの仕方としては、
学校の場合
- 表情だけに頼らないやりかたで自分の内面を伝える。
- 相手の気持ちを理解する機会を作るために、ボディランゲージを積極的に使う。
- 喜怒哀楽をイラストで表現した「表情カード」のような視覚的媒体を独自に作成し、子どもたちに使わせる。
家庭の場合
- 感染症対策との両立を図りながら、できる範囲で豊かな表情を子どもたちに見せる。
- コロナ禍以前よりも意識して、子どもと表情や身体を介してコミュニケーションする機会を作る。
といったことがあるそうです。
表情が見えるよう透明マスクで対策するところも
フランスでは、昨年9月から、保育園、幼稚園や聴覚障害者の学校の教員、託児所のスタッフに向けて、口元が透明になっているマスクが配布されたとのこと。
きっかけは、幼児教育や保育現場のスタッフ、労働組合、科学者たちが、新聞などのメディアを通じて、その必要性を強く訴えたため。
その結果、「子どもたちが表情を一生懸命見ようとする」とか、「これまでみられないほどの、満面のほほえみを見せてくれた」などの成果が見られたようです。
フランスでの透明なマスクについて取り組みについては、こちらの記事もありました。
補聴器や人工内耳をつけている生徒たち、外国語としてフランス語を学ぶ生徒たちが学ぶときに、一般的なマスクでは困難が生じる。そのため、透明なマスクが先生、生徒の一部に配布されたことなどが書かれていました。
一般的なマスクは「口元」が全く分からず、「言語」の理解・習得、また他の学習においても非常に不便さがあると私も感じていました。政府が支援するという形は難しいかもしれませんが、日本でも口元が透明なマスクが一般的になれば、学習やコミュニケーションにおいての子供たちのストレスが少し改善されるのではないかと思います。
個人的には、口元が透明なマスク、ぜひ一般的になってほしいです!一人だけだとちょっと浮いてしまいそうなので、、、
また、個人的に読んでいて興味深かったのは、
「最近増えているオンライン保育などで画面越しに顔の動きを見せることは、子どもたちの発達に効果的か?」という問いです。
まずは、現実世界とオンラインでのコミュニケーションが比較されていていました。
現実世界でのコミュニケーション
赤ちゃんが抱っこなどの身体的接触を大人から受ける。
↓
脳からオキシトシンやドーパミン、セロトニンが分泌され、体の内部に「心地よい感覚」を得る。
大人から笑顔で積極的に声をかけられる。
↓
笑顔で積極的に声をかけられたり、抱っこなどの身体接触によるコミュニケーションの積み重ね
↓
体の中で「心地よい感覚」と、その人の表情や声を結びつけて脳内へ記憶。
↓
赤ちゃんが、その人の表情や声を見聞きするだけで「心地よさ」を感じるようになる。
オンラインでのコミュニケーション
抱っこなどの身体接触を大人から受けることができない。
↓
コミュニケーションが視覚と聴覚のみになる。
↓
相手に対して心地よさ、安心を得ることができない。
という違いがあるのだそうです。このようなことから、コミュニケーションにおいて身体接触を伴うことが大事とされていました。
大人でも、接触を伴うか伴わないかで全く違ってきますもんね!わかる気がします。
身体の触れ合いと微笑み、声かけを子どもと共有できる方法として、「絵本の読み聞かせ」がおすすめとして挙げられています。
下記におすすめ理由を記載します。
・ただの声かけでは長時間は難しいが、親子のコミュニケーションの持続が可能。
・膝に抱っこし、触れ合いながら声や笑顔を交わすことで、親子ともに、オキシトシン分泌が高まり、「心地よい感覚」が起こる。
絵本の中でのさらにおすすめは?というところでは、1歳前の赤ちゃんでも見やすく絵で、お父さんやお母さんなど読み手により表現が変わることで脳や心により良い発達を促す効果も見込める、『いないいないばあ』(松谷みよ子・ぶん 瀬川康男・え)がおすすめだそうです。
知らない人はいないよね?という絵本の代表でもあり、たしかに、人によって「いないいないばあ」の言い方、ニュアンス、表情も変わってきますし、楽しんでもらえそうだなと思いました。
また、乳幼児期のお子さんばかりがストレスを感じやすいのかというと、そうではなく、思春期の子どもたちにもストレスが大きいとのこと。
思春期特有の脳の発達により、「よくわからないけどイライラする、腹が立つ」という自分では抑えられない衝動を抑える働きをもつ前頭前野は、成熟に25年かかるとのことですが、前頭前野を活性化させて、親子で「ハグをしてオキシトシンを高めよう!」と明和先生は思うようにしているそうです。
つまり、オキシトシンを高めることで、赤ちゃんの場合と同様、子どもたちに「心地よい感覚」を与えられるということで、我が家でも、出来るだけ「頑張っているね!」「すごいね!」と褒めたり、ハグなどの体の触れ合いを増やすよう日々心掛けるようになりました。
コロナ禍で大変な時期ですが、ぜひたくさん褒めてあげたり、ハグをしてお子さんを心身ともにサポートしてもらえたらと思います!